物流業界はどこへ向かう? 法改正と規制強化から見る今後の変化を大胆に予測
こんにちは!日野コンピューターシステムのブログへようこそ。昨年はドライバーへの労働時間上限規制が物流業界を直撃しました。今年は、総合物流効率化法(物効法)や貨物自動車運送事業法(事業法)の改正で、荷主への規制的措置や多重下請け構造の是正が進められます。6月までの通常国会では、全日本トラック協会からの働きかけで、最低原価や更新制の導入などさらなるトラック業界の商取引適正化が可決されました。これから物流業界はどのように変化していくのでしょうか?今回は少し大胆に、予想してみたいと思います!
1. 時間外労働時間の短縮について
まず、労働時間規制ですが、これは今後も強化されます。年間の時間外労働時間を、一般産業並みの720時間へ短縮することが求められているからです。この4月に施行された改正貨物自動車運送事業法(事業法)と総合物流効率化法(物効法)成立時の付帯決議で、「できるだけ早期に時間外労働の上限を一般労働者と同じにできるよう」決められました。建築業界は既に720時間に対応しており、960時間の上限を持つ産業は医師と自動車運転者だけです。国による過労死基準は、月80時間以上です。これらを考え合わせると、そう遠くないうちに自動車運転者の残業時間上限規制も短縮することが検討され始めるでしょう。
それ以外でも、終業から始業までの時間を一定時間確保する勤務時間インターバルについても、全産業に対し義務化の検討が始まっています。運送業界では、24年の改善基準告示改正で「11時間を与えるように努めることとし、9時間を下回らない」とされました。大手企業の中には、「今回の改正で一番対応が難しかった」という企業もあるようで、注意が必要です。
2. 労働時間と働き方の改善について
労働時間を含む働く環境の改善は、法律対応以外にもっと深刻な問題に直結します。そう、人手確保です。多くの人が、スマートフォンを使って転職する時代。完全週休二日制を条件に仕事を検索されてしまえば、多くの物流企業は表示すらされません。法と社会の両面から、労働時間や働き方の改善は避けては通れない課題となっています。
3. 総合物流効率化法(物効法)と
貨物自動車運送事業法(事業法)の改正について
一方で、物流の長時間労働は構造的な問題です。ただでさえ上がりにくい運賃に加え、多種多様な付帯作業や、発着荷主の庭先での長時間の手待ち時間。このような課題を解決しようと行政が打った手が、先述の物効法と事業法の改正です。
物効法は、積載率の向上や荷待ち削減を求める法律で、例えば荷主なら年間9万トン以上の出荷がある場合が対象となります。荷主企業だけでなく、コンビニエンスストアなどのチェーン店の本部や、元請け物流企業、倉庫や港湾企業も規制範囲に含まれます。
一方の事業法は、物流企業、それも運送事業者に対する規制です。書面交付の完全実施や、下請け管理簿作成など、取引の流れと状況を把握することで、取引適正化につなげる狙いがあります。これまで、多重下請けが業界の課題の一つとされていましたが、初めてメスが入ることになります。さらに、現在、国会で進められている改正で、最低原価と事業更新制が導入されることとなり、不採算での貨物引き受けなどの行き過ぎた競争環境には一定程度ブレーキがかかることになります。また、最初の事業法改正で「抜け穴」とされた利用運送も規制の対象に含むこととなりました。詳細は、今後省令などで詰めていくこととなりますが、これまでとは物流業界の在り方が大きく変わることには間違いありません。
4. 今後の規制について
現状、多くの運送事業者の皆さまにとっては、規制ばかり厳しくなっていって仕事が回らなくなり、荷動きの低下もあり、思ったより収入が上がらないというのが実感ではないでしょうか?そして、車両費・燃料費・人件費などのコストは上昇の一途。2024年は、白ナンバーの違法営業なども増えていて、かえって競争環境は激しくなっていたとみられているようです。今後トラックGメンや、Gメン調査員をはじめとした行政などの調査・規制が適切に行われることで、実効性が生まれてきます。公正取引委員会の動きも含めて、取引適正化は政府主導の動きです。生産性の向上による経済成長がなければ、日本は国家として立ち行かなくなります。そういった全体の流れを踏まえれば、規制緩和に逆戻りすることはないと予想されます。
さらには大手企業の幹部の中にも、「政府は物流企業を集約しようとしている」と懸念を示す声があり、現場の不安感は非常に大きいと感じています。優良企業が生き残れる業界になるために、行政は適切なかじ取りを進めてほしいと思います。
5.さいごに
いかがでしたか?今日は予想も含めて、物流に対する規制の動きを考えてみました。日野コンピューターシステムでは、物流に関わるデジタルソリューションを提供し、業界の効率化、安心安全に貢献していきたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました!
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この記事を書いた人
日野コンピューターシステム株式会社 ソリューション推進部 重藤